町田・多摩エリアで「そろそろ事業承継を…」とご相談に来られるオーナー経営者から、最も多くいただく質問が「結局、何から始めればいいのか?」というものです。税理士・銀行・商工会議所からバラバラに情報を聞いて、かえって混乱されている方も少なくありません。

本記事では、司法書士が日々の現場から見えてきた「初動の5ステップ」をご紹介します。

結論:まずやるべきは「現状把握」と「方向性の決定」

事業承継というと、いきなり「自社株対策」「M&A」「節税」といった専門的な打ち手から考えてしまいがちですが、その前に押さえるべき順番があります。

司法書士が日々ご相談を受けている経験から導き出した「初動の5ステップ」は次の通りです。

初動の5ステップ

  1. 自社の現状を棚卸しする
  2. 後継者と承継の方向性を決める
  3. 時間軸を決める(5〜10年計画が標準)
  4. 誰に相談するかを決める(士業の役割分担)
  5. 最初の一手として登記関連の整備を始める

この順番で進めれば、後続の打ち手は自然と絞られていきます。一つひとつ、丁寧に見ていきましょう。

ステップ1 — 自社の現状を棚卸しする

何より先に、今の会社がどんな状態かを客観的に把握することから始めます。具体的には「株主」「定款」「役員・登記事項」の3点を確認します。

株主名簿の確認

株主は会社の所有者であり、事業承継を考えるうえで最初に把握すべき存在です。株主総会で会社の重要事項を決定する権限を持つのは株主だからです。

たとえば、以下のような事項は株主総会の決議が必要です。

  • 取締役の選任・解任
  • 定款の変更
  • 合併・組織再編などの重要事項

ところが、「うちの会社の株主、誰だっけ?」となるケースは少なくありません。次の書類で現在の株主構成を確認できます。

  • 法人税申告書 別表2(同族会社等の判定に関する明細書) 毎期作成され、上位株主の氏名と保有株数が記載
  • 原始定款 設立時の発起人=最初の株主が分かる
  • 過去の株主総会議事録/商業登記の株主リスト 議決権を行使した株主や登記申請時の上位株主が記録

これらを突き合わせて株主名簿と照合すると、次のようなズレが見えてくることがあります。

  • 親族に株を譲渡したが、株主名簿を書き換えていない
  • 相続で複数の相続人に株式が分散したまま
  • 創業時に名義を借りた名義株がそのまま残っている

こうしたズレが見つかった場合は、事業承継に進む前に整理が必要です。

定款の確認

会社のルールが書かれている「定款」の確認も必須です。手元にある現物と照らし合わせ、次の点をチェックします。

  • 定款の現物が手元にあるか 紛失しているケースは想像以上に多く、再作成が必要になることも
  • 変更履歴が正しく反映されているか 過去の役員任期変更や事業目的追加が漏れていないか
  • 「有限会社」のままの定款になっていないか 2006年の会社法施行で有限会社は廃止されており、現在は「特例有限会社」扱い
  • 譲渡制限・種類株式・役員任期の規定 事業承継の打ち手(種類株式の活用・後継者への譲渡)に直結する重要事項

定款の内容が事業承継のスキームに合っていないと、後で定款変更の手続きが必要になります。早めの確認が結果的に時間と費用の節約になります。

役員構成・登記事項の確認

登記簿に記載されている役員・本店・事業目的が現状と一致しているかも確認します。

  • 役員の任期が切れていないか 任期は定款で定められています。任期満了後に重任登記をしないまま放置していると、過料の対象になることも
  • 代表者の住所が現在の住所と一致しているか 引っ越し後の住所変更登記がされていないケースは非常に多いです
  • 本店所在地・事業目的に変更がないか 実態と登記内容にズレがあれば、修正のための登記申請が必要

このあたりは事業承継の前段階として整理しておくべき、「会社の現状診断」と言えます。

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株主名簿整備の進め方は 株主名簿の整備から始める事業承継 にて詳しく解説しています。

ステップ2 — 後継者と承継の方向性を決める

現状把握ができたら、次は「誰に・どう承継するか」の方向性を決めます。ここでいう承継とは、会社のオーナーである株主の地位を誰に移すかということです。

3つの選択肢

承継のパターンは大きく3つです。

  1. 親族内承継 ご子息・ご令嬢など親族内に承継させる方法。最も多いパターン
  2. 従業員承継(親族外承継) 役員や幹部社員に株式を譲渡して承継させる方法
  3. 第三者承継(M&A) 親族・社内に候補がいない場合に、外部の第三者へ株式を売却・譲渡する方法

それぞれにメリット・デメリットがあり、後継者候補の有無や会社の規模、ご家族の意向によって最適な選択肢が変わります。

後継者候補がいる場合・いない場合

候補がいる場合は、日々の業務の中で経営者としての適性を見極めることから始めます。確認ができたら早めに本人に承継の意思を伝え、社長としての教育期間を設計しましょう。経営判断や取引先との関係構築には時間がかかるため、5年〜10年単位の計画が現実的です。

候補がいない場合は、次のような選択肢を視野に入れます。

  • 事業承継・引継ぎ支援センターを介したマッチング 公的機関・無料相談・各都道府県に設置(中小機構が運営)
  • M&A仲介業者を介したマッチング 民間・有料・専門サービス

どちらも「会社を引き継いでくれる第三者」とのマッチングを仲介する役割を担います。違いは公的か民間か、無料か有料か、対応範囲の広さです。

「親族・社内に後継者がいないから廃業しかない」と思い込まず、第三者承継という選択肢を早めに検討することが、会社と従業員の未来を守ることに繋がります。

ステップ3 — 時間軸を決める(5〜10年単位の長期計画で)

事業承継は短距離走ではなく長距離走です。いつまでに完了させたいかを逆算して、必要な期間を確保しましょう。

親族内承継でも準備に時間がかかる3つの理由

① 後継者の教育期間

経営判断・取引先との関係構築・社内の信頼形成——これらを1〜2年で完了させるのは現実的ではありません。後継者を「代表取締役」として育てるには、最低でも3〜5年は見ておきたいところです。

② 自社株対策のための準備期間

自社株式の評価額のコントロールや贈与・譲渡のスキーム設計は、税理士との連携のもと数年単位での準備が必要になります。

③ 金融機関・取引先への根回し

代表者の変更や経営陣の交代について、日頃取引のある金融機関・取引先へは事前に伝えておきましょう。手続きがスムーズになるだけでなく、承継後の会社の活動においても有利に働きます。

「生きてるうちに動く」が鉄則

事業承継は、現経営者がご健在で意思決定ができるうちに動くことが鉄則です。

突然の体調不良や不慮の事故で意思決定ができなくなると、打ち手の選択肢が極端に狭まります。相続発生後に「誰が株式を相続するか」という問題が加わると、事業承継の議論が「相続」の議論にすり替わってしまい、難易度が一段上がります。

近年特に取り沙汰されているのが認知症の問題です。認知症を発症してしまうと、株式の処分や贈与契約の締結、定款変更の決議など、事業承継に必要な法律行為が困難になります。

「まだ早い」と感じるくらいのタイミングが、実はちょうど良い始めどきです。

ステップ4 — 誰に相談するか(士業の役割分担)

事業承継は一人の専門家ですべてが完結する分野ではありません。それぞれの士業・専門家の守備範囲を理解した上で、適切に振り分けて相談することが大事です。

専門家別 守備範囲マトリクス

専門家守備範囲
税理士株価評価・税務スキーム・節税
司法書士株主整理・定款・登記・種類株式の設定・遺言・家族信託
弁護士紛争・株主間契約・M&A交渉
金融機関資金調達・経営者保証
事業承継・引継ぎ支援センターマッチング・公的支援

司法書士に最初に相談するメリット

数ある専門家の中でも、事業承継の最初の入り口として司法書士に相談することには明確なメリットがあります。

1. 「打ち手」を整理する起点になる

司法書士は登記簿の現状確認や定款の整理を通じて、会社の現状を客観的に診断できます。「株主が誰か」「役員任期は」「定款の譲渡制限は」——こうした基礎情報の整理は、どの承継スキーム(親族内・従業員・M&A)を選ぶにせよ全方向で必要になる前提作業です。

2. 他の専門家への「振り分けハブ」として機能する

税理士には株価評価・税務スキーム、弁護士には紛争予防・契約書、金融機関には資金調達——それぞれの専門家に適切なタイミングで適切な相談を振る役割を、司法書士が担うことができます。

3. 中立的な立場で相談できる

M&A仲介業者と違い、司法書士は「成約しないと報酬が発生しない」という構造ではありません。親族内承継でも、M&Aでも、家族信託でも、ベストと思われる選択肢を中立的に提示できる立場にあります。

ステップ5 — 最初の一手は「登記関連の整備」から

ここまでお伝えした内容を踏まえて、まず着手すべき具体的なアクションは次の5つです。

  1. 株主名簿の整備 別表2・原始定款などから現状の株主を確認し、名簿を整える
  2. 役員変更登記の確認 任期切れの放置がないか、登記簿と定款を突き合わせる
  3. 代表取締役の住所変更登記 現住所と登記簿の住所が一致しているか確認・更新
  4. 定款の見直し 譲渡制限・種類株式・役員任期など、事業承継のスキームに合うよう整備
  5. 経営者保証の現状確認 個人保証が会社にどれだけ紐づいているか、金融機関に確認

これらは事業承継のスキームが何であれ、共通して取り組むべき「基礎工事」です。スキーム決定の前に、ここから始めることで、後続の判断がスムーズになります。

町田・多摩エリアでの事業承継ご相談について

司法書士法人まちたまでは、町田・多摩を中心とした多摩地域・神奈川北部エリアの中小オーナー経営者を対象に、事業承継のご相談を承っています。

当事務所が対応している主な業務:

  • 株主の整理・株主名簿の整備
  • 定款変更(譲渡制限・種類株式の導入など)
  • 役員変更登記・代表取締役住所変更登記
  • 事業承継に向けた遺言作成
  • 家族信託を活用した事業承継スキームの設計

初回相談の流れと費用

  • 初回1時間は 無料
  • 以降、30分ごとに5,500円(税込)の相談料
  • 多摩センター事務所・町田事務所にお越しいただけます
  • オンライン面談にも対応しています

「うちのケースだと何から始めればいいか」が見えない段階でも構いません。お気軽にお問い合わせください。

まとめ — 順番を間違えなければ怖くない

事業承継は、やるべきことが多く一見複雑に見えますが、順番を間違えなければ怖くありません

  1. 現状把握 → 株主・定款・役員の棚卸し
  2. 方向性決定 → 親族内・従業員・第三者の中から選ぶ
  3. 時間軸設定 → 5〜10年計画が標準
  4. 相談先選定 → 司法書士を入り口に、各専門家へ振り分け
  5. 登記関連の整備 → 基礎工事から着手

完璧を目指す必要はありません。まずはステップ1の棚卸しから始めてみてください。早く動き出すほど、選べる打ち手の幅は広がります。

町田・多摩エリアで「そろそろ事業承継を…」と考え始めた経営者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。